パラアイスホッケー日本代表パラリンピック出場権獲得記念~新津講師インタビュー~

今年3月にイタリアで行われるミラノ・コルティナパラリンピック。

6つある冬季パラリンピック競技の内の1つが、下肢に障がいのある選手が「スレッジ」と呼ばれるそりに乗って行う「パラアイスホッケー」です。

11月にノルウェーで出場枠の最後の2つのイスをかけた最終予選が行われ、日本代表が見事優勝し、2018平昌大会以来となる出場権を獲得しました。

その日本代表で副キャプテンとしてプレーしたのがパラ学の講師である新津さんです。

今回は大きな「チャンス」を掴み取ってきた帰国直後の新津さんに最終予選のお話をお伺いしました。


最終予選とは

ミラノ・コルティナパラリンピックのパラアイスホッケーの出場枠は8。

最終予選前に5か国と開催国イタリアの計6か国が決定しており、残りの2枠を懸けて6か国が総当たりで戦いました。

大会前の下馬評では日本は、スロバキア、韓国、ノルウェーに次ぐ4番手。それでも、「実力としては十分に戦えるだけの力がついていた」(新津)日本は初戦の韓国戦、2戦目のスロバキア戦が大きなポイントとして最終予選に挑みます。

崖っぷちからの生還

初戦の韓国戦。第1ピリオドに日本が先制して最終第3ピリオドまで進みますが、韓国の猛攻を凌ぎきれず、1-2の逆転負けを喫します。

直近の韓国チームの状態からしても「勝つべき試合だった」という中での逆転負けに、チーム内では泣いたりやけになったりする選手もいて「かなり沈んだ状態だった」といいます。

翌日のスロバキア戦も第2ピリオドに先制したものの、第3ピリオドに逆転される前日と同じ展開に。

格上相手に逆転され万事休すかと思われましたが、新津さんは「何とかなるんじゃないか」と感じていたといいます。「日本代表のメンバーはパラリンピックに行くために必要なことをしっかりやってきた自信があった。根拠はないがここで終わるはずない。」と。

その感覚は現実のものとなります。

残り1分5秒で日本のエース伊藤樹選手が同点弾を叩き込むと、タイムアウトを挟んでわずか12秒後。キャプテンの熊谷選手(高森町)がゴールを決め、劇的な逆転勝利を掴み取ります。

運命の最終戦

スロバキア戦での勝利で「持ち直した」日本代表は、続くカザフスタン、スウェーデンに対して危なげなく連勝します。

最終戦を前にした時点で日本、スロバキア、韓国、ノルウェーの4チームが3勝1敗の勝ち点9で並ぶ異例の大混戦。

しかも、最終節は日本vsノルウェー、スロバキアvs韓国の直接対決となり、それぞれの試合で「勝った方がパラリンピック出場」という状況に。

6日間で5試合のハードスケジュールに加えて、「勝てば天国、負ければ地獄」のシチュエーションに「極限の精神状態だった」といいます。

ノルウェーとは直前の遠征で3回対戦しており1勝2敗。

厳しい戦いが予想される中で始まった試合は開始38秒で日本が幸先よく先制し、7分、12分と伊藤選手の連続得点で日本がリードを広げます。

第1ピリオド終盤には新津選手がノルウェー代表のエースを「道連れ退場(2分間)」している間に日本4点目を奪って大量リードを獲得。

「勝つとしたら第1ピリオドで複数得点とって逃げきる」と思っていた新津さんの思惑通り、先手を取った日本は第2ピリオド以降も着実に追加点を積み重ね、最終的には8-2で勝利。

開催国相手のアウェーの中、堂々の勝利を収めて最終予選首位でパラリンピックの出場権を獲得しました。

 

帰国後は早速パラ学に復帰

インタビューした日は帰国してから1週間ほどたった頃で、この日は御代田町御代田北小学校6年生との「パラ学(車いすボールチャレンジ)」の授業へ。

最終予選は「永遠に終わらないと感じるほど1日1日が長かった」というほどのプレッシャーやドラマチックな展開もあり、すぐ目の前にパラリンピックがあることは「まだ実感がわかない」という新津さん。

時差ぼけと帰国直後の体調不良で「体はボロボロ」ということでしたが、疲れを感じさせない明るい表情で児童との授業を楽しんでいました。

個人としてパラリンピックに出場できるかは年明けの選手選考まで確定しないため、子ども達への報告は控え目でしたが、先生からはパラリンピックでの特別な「ゴールパフォーマンス」をお願いされる一幕も。

パラ学では「チャンス」をテーマに「小さなチャンスの積み重ねが大きなチャンスに」と語っている新津さん。「子ども達に説得力のある実績ができて良かった」と安堵の表情を見せていました。

新津さんのパラ学についてのインタビューはこちら ~パラ学の現場から~講師特集③新津 和良
Road to MILANO

新津さんは、最終予選での自身のパフォーマンスについては「良かったとは言えない」と振り返り、「他の選手にパラリンピックに連れていってもらった」と悔しさを滲ませました。

それでも、「子ども達には“悪い出来事もチャンスに変えられる”と伝えているように、この最終予選での悔しさを必ず活かしたい」と、視線はしっかりイタリアへと向いています。

新津さんも出場した前回・北京大会の最終予選では、日本代表は5戦全敗。「何もできなかった」と、どん底を味わいました。その経験さえ“チャンス”に変え、見事にカムバックした今回の日本代表チーム。

そして先日、新津さん自身も無事に日本代表に内定。所属する岡谷市拠点の長野サンダーバーズからは、新津さんを含む4選手がパラリンピック日本代表に名を連ねることになりました。

開幕まで残りわずか、世界へと羽ばたく選手たちの活躍に、ますます期待が高まります。